2016年7月8日金曜日

「写真と記憶」

 数年前、キラー通り ( 外苑西通りの一部 )

を歩いていました。

とある BAR の前を通りかかると、

窓越しに長いカウンター、その先の壁に

張ってあるポスターが、ナントナク気になり、

立ち止まって観てみました。



 それは、モノクロの写真で、少し体格のいい

女性が、BAR のカウンター ( 本物の店の

カウンターと、この写真のカウンターが

繋がってるように見えました。) に空洞な視線を

漂わせて座っている。手元には汗をかいた

グラスが、一度口をつけただけで、

忘れられたようにおいてあります。

 僕は、ナゼ、この写真に、

こんなに引きつけられるのだろう!?

などと考えながら、我が手はすでにお店の

 door を開けていました。

 「こんにちは、突然すみませんが、そこの壁に

張ってあるポスターは、どなたが撮ったのか

分かりますか?」

と聞いてみました。答えは、残念ながら

 「I don't understand......」

 むむむ、無念であるが、それ以上調べようも

なく、諦めて、そのまま、ほとんど忘れて

いました。



 それから幾星霜。

 ある日、ぶらりと神保町を歩いていると

ふと目に入った本が僕の目 ( まなこ ) を

釘付けにしました。

 それは、あの時 ( キラー通りの BAR の壁に

張ってあったポスター ) の写真が小さくなって

単行本を装幀していたのです。



「 これ、これです!!」

 間違いなく、あの時の記憶とピッタリ

重なりました。

 もちろん、迷わず、すぐに購入。

 早速、ページをめくって見ました。

 photographer は、藤原新也氏でした。

 なるほど.........。


 写真と記憶の邂逅。

 本の中味も中々、興味深いものでした。


                                                           飛田